・・・・・・・・・・ここは何処だ?
じめじめした洞窟を歩いている・・・・・・
壁も地面も天井も湿った泥で出来ているようだ。
前にも誰か歩いてる。
少し駆け寄って、話し掛けようと、彼の肩に触れた。
ぐちゃ・・・
何か腐った肉を掴んだ感触をして、慌てて手を退けた。
振り向く彼の顔は醜く崩れていた。
「・・・・・あうぅ・・・・・悪魔が・・・俺に・・・・・・
!!・・・・・・・・・・・・・・・・来るなぁぁああぁ!!」
錯乱した口調で叫んでいる・・・・・・
「俺は・・・・・・俺はどうなっちまったんだ・・・・・
分からない・・・・・悪魔が急に・・・目の前に・・・・」
そのまま自問自答して僕が見えていない様だ。
少し歩くと、女性がうずくまっている。
彼女もあたかもゾンビのように醜く変貌していた。
彼女独り言のように呟き続いている。
「コンピューターを・・・立ち上げたら・・・・・急に・・・・・
気がついたらここにいたの・・・・・・
私・・・・・・・・どうして・・・・・・・・・・・・・・?
もしかして・・・・・死んだの・・・・・・・・・?」
今まで気付かなかったが、
至る所に人影が見られた・・・・・・
しかし、その姿はどこか欠けたり、焦げたり、腐敗したりして、
明らかに生きた人間ではなかった。
中には身体を失って、火の玉の状態で言葉を発している者も居た。。
「うおぉぉおおおおおお・・・・・・・・戻ってきてくれぇ・・・・・
よしこぉぉ・・・・・・・・」
「・・・・・・・どうして、誰も助けに来てくれなかったの・・・・・・?
他のシェルターに救援通信だって、出した筈なのに・・・・・
初台も、御茶ノ水も・・・・所詮は自分さえ良ければいいんだわ・・・・」
「D.D.M.を悪魔が・・・・・・馬鹿な・・・・・・
橘上官が・・・・・・通信を・・・・・・・」
皆、それぞれ苦悶の表情を浮かべながら、悲痛の叫び声を発していた。
ここは・・・・・・・・地獄か何かか?
僕は・・・・・死んだの・・・・・か?
すぐに自分の手を見た。
自分の手は腐敗していない様だ。
あまり、自分が死んだ実感が湧かない・・・・・・
でも、ここには死者しかいない・・・・・
やっぱり僕は死んだのか。
「俺は俺だぁ・・・・・・・・お前なんかと一緒じゃないんだ・・・・・・・
お前こそ・・・・・・・・・俺にくっついてるんじゃねぇ・・・・・・
・・・・・・これは、あたしの身体よ・・・・・誰にも渡さないぃ・・・・・・・」
複数の人間がくっついた死体が叫んでいる。
そのうち、ひとつの顔がこちらを向いて
「おま・・は生きているのか?そのーからーだをくーれーーーーぇ!!」
その幾人も融合した物体が近づいてくる。
明確に殺意を持っている。
女性の顔から何か緑色の液体を吐いた。
慌てて避けた。
自分のいた場所は音を発てて、腐っていく・・・・・
炎の呪文を唱え、
「アギラオ」
相手を燃やした。
「ぎゃああああああああ・・・・・・・・・
・・・・・苦しいい・・・・・・・
・・・・・・・・誰か助けて・・・・・・・・・
燃えてるあんたが離れなさいよ・・・・・」
その屍体らはわめきたてながら、臭い煙とともに崩れていった。
ここはどうやら油断が出来るところではない。
すぐに自分の持ち物を調べた。
セラミックブレードもウージーも、アームターミナルもある。
どうやら、あの悪魔と戦った時に、持っていたものはあるようだ。
また、別の死体が叫んでいる。
「コンピューターから悪魔が・・・・・・・・
悪魔は・・・・・炎を・・・・・私は・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
メイルは・・・・・初台から・・・・・・・・
ひどい・・・・・ひどいわ・・・・・・
でも・・・・・最後に見えたわ・・・・・・光が・・・・・・・」
あの時送ったメールの犠牲者か・・・・・・・・
自分の犯した罪が深く責める。
足早にその女性から離れた。
「突然・・・・・突然下の階から、ゾンビが上がってきたんだ。
俺達はなす術もなく・・・・・気付いたらここだ・・・・・・
自分の体もゾンビみたいになってるしよ・・・・・・・
シェルターは安全じゃなかったのか・・・・・・・・?
・・・・・・・ああ・・・・・・最後に見たみたが・・・・・記憶に残ってる・・・・・・
デビルバスターだ・・・・・・デビルバスターが俺を・・・・・・・・」
あの時殺したゾンビなのだろうか?
誰かが僕の服を引いている・・・・
振り返ると、頭が半分失った子供だった。
「・・・・・・目の前で・・・・パパとママが・・・・・・・・
でも・・・・・パパもママも、ここにいないんだ・・・・・・・
僕は独りぼっち・・・・・・・」
知多か・・・・・いや違う・・・・・・
「お兄ちゃん・・・・・・・・何だか僕たちと違う・・・・・
・・・・・この先に行くの?
ここの奥には、もっと恐い悪魔がいるんだって・・・・・
気をつけてね・・・・・・・・」
通路の先に片腕がない女性がいた。
「もうだめ・・・・・・所詮は・・・・デビルバスターなんて・・・・・・・
当てにならなかったんだわ・・・・・・・」
こちらの姿を確認し、女性が近寄ってきた。
「あなた・・・・・デビルバスター?
みんな死んだのね・・・・・・・・?
みんな・・・・みんな死んだわ・・・・・
ここにも・・・・・・いろんな人が・・・・・・・・みんな死んでる・・・・・・
私分かったわ、シェルターの人間だけが、のうのうと暮らしてるって事・・・・・・・・」
それを言い、また去っていってしまった。
歩いていくうちに気付いたが、どうやらこの洞窟は中心に向かって螺旋状に続いている。
そして中心に近づくにつれ、人間だったものが少なくなっていった。
そのかわりにイカヅチと呼ばれるヘビや爬虫類の顔を持つ人型の悪魔イヒカ等の悪魔が目立ってきた。
「ひゃひゃひゃひゃ・・・・・なかなか笑わせてくれる。
お前に着いて行きたいだが、いいかの?」
ウェットなジョークを行ったら、イヒカのつぼに入ったらしい。
「ああ、いいぞ。」
「では、契約のサインを結んでやろう。」
無事契約を結んだ後、彼は魔界に戻った。
しまった。ここのこと聞くべきだった・・・・・
仕方ない・・・召喚する少ないマグネタイトも減るし・・・・・
しょうがない、このまま進むか・・・
中心に辿り着いた。
腐りかけた土の扉を守るかのようにカエルの顔をした人間なようなモノがいた。
デビルアナライズされた結果が、ゴーグルに写し出された。
黄泉醜女というらしい。
その悪魔が僕に気付いて、話し掛けた。
「おや・・・・・・・・・・そこにおるのは、生者ではないかえ?
ここは、黄泉比良坂。生者の立ち入りはまかりならぬ。
そなたはまだ、死す運命にある者でなし。
どのようにして、この地に立ち入ったかは知らぬが、即刻立ち去るがよいぞ!」
僕が生者だと・・・・・・・
僕は死んでいないのか?
しかし、ここを立ち去れだと・・・・・
僕は何処に行けというのだ?
この先何があるのか興味もあった。
悪魔の警告を無視して奥に進もうとした。
「待て!!ここより先は、完全な死者のみの世界ぞ!
そなたを通す訳にはゆかぬ!!
無理に通ろうと言うのであれば、ただでは済まぬぞ。
そなたを魂の一欠けらも残さずに、喰うてくれるわ!!
魂まで喰えば、蘇る事はおろか、転生すら出来ぬ・・・・・・・
そなたの存在自体が、消え失せるのじゃ!!」
死の世界か・・・・なら由宇香もいるかもしれない・・・・・
どうせ生きてたって、あの悪魔に蹂躪された地上じゃ、すぐに殺されるのが落ちだ。
由宇香に会えるなら、この悪魔を殺す覚悟ぐらい出来ている。
剣を構え、黄泉醜女を睨んだ。
「おのれ!!まだ、命運尽きておらぬものを・・・・・・・・・!
命を粗末にしおって・・・・・!!
そんなに命が要らぬのなら望み通り、わらわが喰うてやろうぞ!!」
黄泉醜女はそう言って、飛びかかろうと身構えた。
その時、僕の意識に呼びかかる声があった。
「・・・・・・・・だめ!!・・・・・・・・・・・・
葛城君・・・・・まだ死んではいけないわ・・・・・・・
・・・・・あなたは・・まだ勤めを果たしていない・・・・・・・
・・・・・・・・現世に戻って・・・・・・そして・・・・・・・・・・私を!!!」
優しい女性の声が響き、そして一陣の豪風が巻き起こった。
僕はたまらず、その風に吹き飛ばされ、間一髪で、黄泉醜女の攻撃をかわすことが出来た。
そのまま風に吹き飛ばされ、真っ黒な空間へと飛ばされて行った。
誰もいない真っ黒な空間を、上へ下へと吹き飛ばされて行くうち、
いつしか僕は、意識を失っていった・・・・・・・・