階段を降りると、まだ掘ったばかりのような洞窟に続いている。
「B1Fからは、労働エリアだ。
奴らは、奴隷を使って新宿の地下を掘り、バエル城建設の為の資材や、大破壊前の物資の発掘を行っている。」
園田はさらに説明する。
「指示に寄ればここから三叉路を一度右に曲がり、そして次の三叉路をまっすぐ進み、さらに十字路を一度右に曲がる。
そのあとは一本道となる。」
「わかったわ。」
「先に、急ごう。」
途中、何度も敵に遭遇したが、うまく誤魔化したり、または黙らせた。
そして、今二番目の三叉路で、幽鬼スケルトンを二体を倒した。
どうやら彼らは左の通路にある何かを見張っているようだった。
僕は好奇心に負けて、その通路に進んだ。
「どこを進んでいるんだ、葛城!」
園田の抗議が聞こえてくるが、僕はその通路の先にある扉に手をかけた。
その中は生ゴミの臭いがする発掘場であった。
必死にスコップで地面を掘っている女性の肩をつかんだ。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
女性の目は虚ろで、僕など眼中に無いようだ。
何人もの人が働いているが、だれも僕に無関心でただ働いていた。
何人か倒れている人がいる。
いや、倒れているわけではない。
もう、人ではなかった。
この臭いの正体がわかった。
後ろからうめき声が聞こえる。
「・・・・・・う・・・・・・・あ・・・・・・・・」
どうやらこの男は、精神に異常をきたしているようだ。
目が正気ではなかった。
「・・・・・・クスクス・・・・・・クスクスクス・・・・・・・・」
女性が突然笑い出した。
いくら話しかけてもクスクスと笑い続けている・・・・・・・。
「酷い。」
「何だ、この光景は…」
「酷すぎますよ。」
僕を追いかけてみんなが入ってきた。
「早く行こう。」
園田が辛い表情をしてみんなをその部屋から出そうとした。
「園田さん、この光景を見て何にも思えないのですか?」
「馬鹿やろう。俺達の使命はあくまで陽動だ。…彼らを解放するのは別の部隊がすることだ。
この状況では、それに今何をやっても無駄だろう。」
「それでも…」
上河は何か続けようとしたが、何もいえない。
そう、僕も何もいえなかった。
ただ、彼らをこれ以上見ないほうがいいことを本能的に感じている。
「葛城さんも、何か…」
「行こう。…ダンタリオンをどうにかしない限りだめだろう。」
「……はい。」
僕たちは元の通路を戻り、迷路のような洞窟を進む。
「ここから先は、もう一本道だ。時間が無い、急ごう!!」
園田の声でみんな少し歩調を速めた。
「この先、バール兵共の休憩所がある。気をつけてくれ。」
ドアの前に着くと、甘い香りがしてくる。
「休憩所て言うけど、何の部屋かしら・・・・・でも、いい香りがするわ。」
「香水か?」
中に入ると、三名のバール兵と娼婦が数名いた。
突然の来襲にバール兵たちは対処できず、僕たちは簡単にその部屋を制圧した。
「な、何よアンタ達!
アタシ達に、何の恨みがあるって言うのよぉ!」
「あ、アンタ達、何て事を・・・・・・・・・!」
娼婦たちは抗議の声を上げていたが、無視した。
そして先頭にいた早坂がこの部屋の奥にある扉に向かおうとしたそのとき、ぐったりとしていた娼婦の手が動いた。
警告音とともにアームターミナルのモニターからデビルアナライズされたその女性のデータが入ってきた。
彼女は屍鬼ボディコニアンだ。
「早坂!!気をつけろ!!!そいつはゾンビだ!」
早坂はその言葉に反応して剣を振り落とした。
剣はその屍鬼にめりこんだ。
しかし、あまり効いていないようだった。
さらにアームターミナルから警告音が発している。
周りの空気が変わった。
おぼろげな裸の女性の姿が各所に現れた。
それを見たこの部屋の娼婦たちは驚いた表情で逃げ出した。
モニターに情報が出てくる。
悪霊色情因縁魔だ。
「ここで殺された娼婦たちが化けて出たって訳か?」
園田は銃を乱射しながら、皮肉混じりに言った。
「この数を倒すには時間もかかるから一気に突破したほうがいいかもね。」
「早坂さん!そのゾンビを早く倒してください。」
「こいつ、固いんだ!!葛城、炎を頼む!!」
「ああ、分かった!!避けてくれ、早坂!………アギラオン!!!」
ゾンビはあっという間に炎に巻かれ、炭となった。
それを確認した園田は
「上河!!メギを使え。その瞬間、我々はこの部屋を脱出する!」
「分かりました!……メギ!!」
部屋の中は光に満たされた。
その光をおそれ、一瞬悪霊たちは怯んだ。
そして我々は何とか奥の通路に入り込めた。
「はあはあ、助かりましたね。園田さん。」
「ああ、なんとかな。あれあそこにいる人は?」
一人の女性が通路の片隅でガタガタ震えている…
先ほど逃げた娼婦か?
いや、彼女にまとわりついたバラの茨を見る限り、人間ではないだろう。
デビルアナライズの結果は、樹霊ジプシーローズであった。
モニターに彼女の言葉が次々と映し出されていく。
「ヒィー、殺さないで!!」
「殺すつもりはない。」
僕は話しかけた。
「じゃあ、何か欲しいの?」
「いや、そういうつもりではない。」
「やっぱり殺すつもり?」
「違う。」
「私のことを仲魔にしたいの?」
「……そうだ。」
「じゃあ、その怖いものを横において」
どうやら銃のことを言っているようだ。
僕は銃を横に置いた。
「……甘いわね!!
でも、いいわ。
あんたの仲魔になってあげる。
私、ジプシーローズって言うの。
今後ともよろしくね。」
彼女は契約のサインをし、魔界に帰った。
「ふーー。」
「ご苦労さん、葛城君。」
「先を急ぐぞ。そろそろ弾薬庫の爆破が始まってしまう・・・・・・
間に合ってくれよ!」
何度も曲がりくねった道を駆けていく。