「怖じ気づいて、泣きわめくんじゃないかと思ったが、案外ちゃんと作戦をこなしたじゃないか。
見直したぜ、デビルバスターさんよ!」
治療室を出ると、さっそく声をかけられた。
「作戦は無事成功。少しは使えた様だな。安心したよ。
皆の反対を押しきっていれたはいいが、役立たずじゃあ、リーダーは信用を失っちまうからな。
全く、やれやれ・・・・だ。」
「まったく、あの危険な役目をこなすなんてな。
見掛けによらず、骨のあるヤツだな。
見直したよ。
デビルバスターと言うだけあって、ただのシェルターの人間とは違ったって訳だな。」
上河が期待したように大分風当たりが弱くなった。
「他の部隊がサポートしてくれたから、うまくいったのですよ。」
あまり波風立てないように返答した。
「あまり謙遜するな。嫌味になるぞ。」
「そうそう、ダンタリオンを追い払うなんて普通できないぜ。
…さっきから思っていたんだが、その服取り替えたほうがよくないか?
デビルバスターの制服ってのは、えらく目立つぜ。
そんなの着てると、悪魔に狙われるかも知れんぞ。
武器庫じゃボディアーマー余っていた筈だぜ。」
「すまんが、取り替えるつもりは今はない。
これは形見だから……」
「そうか。悪いことを言った。
しかしなあ、性能はいいんだから、何もそんなデザインにしなくたっていいのにな・・・・・」
「まあね。」
「ま、これからも、頑張ってくれよ。」
「俺も多少は期待している。
今日はゆっくり休んで、疲れを取っておきな。」
二人とは別れ、部屋に戻ろうとした。
「あら、ボーヤ。キャンプ解放作戦の話は聞いたわ。」
犬を連れた女が話しかけた。
作戦前にさんざん文句を言ったあの女だ。
「あんた達、あんな危険な役目をよく引き受けたわね。
私だったら・・・・・・・やっぱり断るわ。」
「嫌われ者が断ることができるか?」
皮肉混じりに言ってやった。
「そうね。
………ところで聞いた?
都庁攻略がてこずってるらしいわ。」
「そうなのか?」
「悪魔たちが立て篭もっているらしいの。
戦略的撤退や篭城なんて、悪魔がやるなんて思いもしなかったわ。
思ったよりも、悪魔って知力が高いのね。」
「やつらが賢いのは身をもって知っている。」
ムールムールの顔が出てくる。
こちらの技術を逆手に取り、住処を奪ったあの悪魔。
絶対に許さない…
奪われたものが戻ってこないなら、あいつらを殺すことしか自分の生きる目的がないと思う。
「あんたって、頭よさそうだね。
それに、悪魔を自由に操る事が出来るんだってね。
コンピューターとか駆使しちゃってさ、凄いモンだわ。
体力馬鹿何かより、かっこいいわね!
これで、新宿解放作戦も成功させたら、御褒美あげちゃおっかなー。」
「御褒美?」
「もしかして、あんた経験ないの?
ふーん、シェルターってお堅いところなんだ。」
そのことか…
「シェルター育ちは嫌いじゃなかったのか?」
「強い人だったら、シェルター育ちだろうが関係ないわ。
もっともあんたが都庁を解放するなんてできるわけないわね。
それじゃあね。坊や。」
まったく、
ここの連中は使える人間だと分かった途端、
すぐに態度が変わる。
自分が強ければ、意外とここも過ごし易い所かもな。
階級性でがんじがらめだったシェルターより評価されている気がする。
デビルバスターの資格がなくても認めてくれたことに内心嬉しかった。