偽典・女神転生 東京黙示録

第十話「仲間」

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食堂に入ると、
「キャンプ解放作戦は、大成功だったらしいな。
死体は俺が可愛がってから、売ってやろうと思ってたが、案外タフなんだなぁ・・・・・・・
益々イカスぜぇ、ボウヤ!!」
さっそくヤジとも取れる一声が響いた。
「新宿解放作戦の話、聞いたぜ!
お前ら、なかなか根性あるじゃん!
見直したぜ!」
こんなに態度が変わるとは……
分かりやすい人達だ。
配給食のパサパサしたパンと具が殆ど入っていないスープを受け取る。
「葛城君。
ここ空いているよ。」
混んでいる食堂の中、桐島の声が聞こえた。
僕は桐島の横の席に着いた。
「本当に作戦に成功してよかった。」
「ああ。」
パンをかじりながら返答した。
「あんな大掛かりな作戦、参加した事なんてなかったし、
もうずっと、心臓が鳴りっぱなしだったわ。
ああ、無事に終わって良かった・・・・・・・・・
今は、そう思うだけで精一杯って感じだわ。」
「僕もそうだよ。」
「でも、葛城君、いつの間に射撃の腕良くなったの?
銃はあまり得意じゃなかったよね。」
そういえば、そうだった。
射撃は得意じゃなかった。
でも、なぜか確実に当てる自信があった。
これもあの夢からなのか?
言われてみると自分でも不思議だった。
腹が少し痛む。
昨日はあの不味いレーションを二つしか食べていなかったから、
腹がひどく減っている。
スープの臭いが空っぽの胃を刺激した。
そして、今まさに食べようとしたとき、
「お前、悪魔を仲間にして、そいつら使って戦うんだってな。」
邪魔が入った。
「悪魔の力を借りて、やっとこさ一人前なんてよ・・・・・・・・・
お前、自分が恥ずかしくねぇのかよ!信じられねぇな!!」
無視することに決めた。
この手の輩は下手に反応しないほうがいい。
「なぁ、悪魔との交渉ってのは、どうやるんだ?
ひたすら悪魔にあたま下げんのか?
けっ!それじゃあ、悪魔を使ってんだか、使われてんだかわかんねぇな!」
……………うるさい。
「おい、なんか言ったらどうなんだ。作戦成功の立て役者さんよ。」
「自分が手柄取れなかったからって、突っかかるのは止めろ。」
「おい!たかだか一回ぐらい作戦成功したぐらいで、調子乗っているんじゃねえよ。」
「葛城君、相手にしないほうがいいよ。」
「お前こそ、何か大きな作戦を成功したことがあるのか?」
「何だと!!」
桐島の制止も聞かず、少し言い返してやった。
そいつの顔は怒りで赤くなり、今にもナイフを取り出そうと身構えている。
たいした人間じゃないな。
あいつらと比べれば、つまらない殺気だ。
近寄った瞬間に、焼やそうと精神を集中させる。
「やめんか!」
威厳のある声が食堂に広がった。
その声の主を見ると、渡邊さんだ。
彼は僕らのほうに歩き、
「何を騒いでいる?」
「渡邊さん。
その、この新入りが生意気で…
ちょっと教育を施してやっているだけで…」
「君は彼の教育係かね。」
「いえ、違いますが…」
「なら、くだらないことで喧嘩するな。
我々人間が悪魔に対抗するためには総力を尽くさなければならない。
ここでつまらないことを争っては悪魔を殲滅できない。」
「はい、そうですが、渡邊さん。」
「分かったなら文句はないな。」
「はい。」
「そして、葛城君。
作戦一つ成功させたぐらいで、浮かれてるじゃない。
都庁の方は、まだまだてこずっているんだ。
自分の手柄を驕らないように。
傲慢はその心に隙を作る。
油断は許されないからな。」
「はい、分かりました。」
多少不満がある様子でその男が帰っていった。
「少々厳しいことを言って悪かったな。
自らを過信して身を滅ぼしたものを数多く見てきたから、忠告をしたかったんだ。
しかしだ。
労働キャンプの解放作戦の成功は、君達潜入部隊が頑張ってくれたからこそ、成し得たものだ。
本当に良くやってくれた。
皆も君達の事は、それなりに認め出して来た様だし、このまま負けずに頑張れ。
今後も、君達の活躍を期待しているよ。」
渡邊さんはそのまま足早に去っていった。
都庁での作戦の難航の為、渡邊伸明は一睡もせずに、対処に追われているのだ。
部下の為、我が身を削ってでも労力を惜しまぬ姿は、どこかしら、西野義雄を思い出させる。
「ふー、よかった。
葛城君、気をつけてね。」
「すまない。」
ただ、悪魔に使われているということだけは言われたくなかった。
今でもムールムールが自分に憑いているのではないかという恐怖感はある。
二度とあいつらに操られたくない。
「それにしてもあの状況をうまく治めてしまうなんて、渡邊さんってすごい人よね。
やっぱり組織をまとめるにはあれぐらいの人じゃないと無理なんでしょうね。」
「ちったぁやるじゃねえか。新入り!
あれだけの口を出せるとは思わなかったぜ。」
「デビルバスターも、なかなかやるじゃない。
ちょっと見直したわ。」
周りにいたレジスタンスたちが一斉に話しかけてきた。
どうやら僕らを仲間として認めたみたいだ。
話しているうちにまだまだ悪魔たちの勢力は健在であることがよく分かった。
「労働キャンプ解放は上手く行ったのに、都庁の方は後ちょっとの所で、てこずってるらしいよ。
悪魔側も、なかなかしぶといね。」
「都庁じゃあ、かなりの死傷者が出たらしいわ。
本当に落とせるのかしら・・・・・・・・・・・・」
「都庁じゃあ、かなり仲間がやられたらしいよ。
バエルがいるだけあって、さすがに守りが固い。
このままじゃあ、かなり不味い事になるな・・・・・・」
「バエルってのは、悪魔共を牛耳ってる親玉だろ?
そいつが都庁にいるらしいけど、親玉相手じゃあ、てこずるのも当然だな。」
「都庁のバエルめ!
生意気にも、篭城なんかしやがってよ!
悪魔ごときが、そこまで知恵を使ってくるなんてよ、予想外だったよな、畜生!!」
「都庁が難航してるって噂だけど、心配いらないわ。
悪魔ごときが篭城したって、意味無いわよ。
こっちの方が上なんだもの!」
「俺達ペンタグラムにかかれば、悪魔共なんざ、へでも無いのさ!
難航してるったって、都庁陥落は目の前だしな。
所詮悪魔は、人間には勝てないってコトさ!」
「案の定、都庁はてこずってる様だな。
みそくそも一緒で、なめてかかるからこうなるんだ。
頭痛いぜ・・・・・・。」
「キャンプ解放はうまく行ったが、都庁の方はかなり不味い状況らしいな。
幾ら強いって言ったって、所詮は悪魔じゃないか、何かうまい方法はないんかね、
ったくよ。」
「新宿の労働キャンプを解放したってのに、懲りもせずに、今度は代々木に作ってるらしいわ!
ったく、悪魔共も、なかなかやってくれるわよね。」
「保護された労働キャンプの奴隷達・・・・・・・・
皆、揃いに揃って、おつむがイカレちまってたらしいぜ!
それほど辛かったんだろうな、可哀相に・・・・・・くっそおっ!
腐れ悪魔共め、絶対許せねェッ!」
「救出された人々は、新宿の居住区に保護されたらしい。
居住区は、破壊前のデパート跡を利用した場所なんだ。
住み心地は、ここより良いぜ。」
「都庁を解放せん事には、何やっても無駄だろうな。」
「ああ、あのバエルさえ倒せればな・・・・・・・・」
食堂の中はいろいろな話や噂が飛び交っている。
「あとは、都庁解放作戦だな・・・・・・・・・
お前らも、もしかしたら出撃されられんじゃないか?」
突然僕達に話題が移った。
「一応、私たち志願しましたけど、どうなるのか分かりません。」
「お、これ以上の手柄を貰ってどうするつもりだ。
お前らゆっくり休んで、今度は俺たちに任せな。」

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