何分待ったのだろう・・・・・・
扉を叩く音がした。
「史人!戻ったぞ・・・・扉を開けてくれ・・・」
西野達が戻って来た様だ。
扉のロックを解除し、中に招き入れる。
ニュートンも一緒にいた。
どうやら桐島はニュートンも連れてきたようだ。
「・・・・・・・終わったよ。」
それは始末したということだろう・・・・・
「エレベーターの溶接も、済ませて来た。
由宇香君は?」
「意識は取り戻したんですが、気分が悪いらしくて・・・・・・
今、病室に居ます。」
「そうか・・・・・。
では、彼女をこのまま休ませて、我々も休息を取ろう。」
「じゃあ、私が皆の傷の手当てをするわ。
ちょっと待ってて、必要なものを取ってくるから。」
桐島は診療室から救急箱を持ってきた。
「じゃあ、葛城くんから・・・・動かないでね。
・・・・・・・・よし、これでOK!
次は・・・・・・・・・・・・・」
「私は後でもいい。早坂をやってくれ。」
「済みません、隊長。
・・・・・・・・・・・・・・・・・
痛ぇ!イたたたた!!!」
「動かないでってば!だから痛いのよ!」
「だって仕方ないだろう・・・・・・・もう少し優しくしてくれよ。」
「もう!!」
「うわっち!痛いってば!!」
「はい!いっちょあがりぃ!!」
「では、早速で済まないが早坂と葛城、君たち二人で食料庫まで行き、皆の分の食料を調達してきてくれないか?
休息ついでに、食事も済ませようと思うのだよ。」
「分かりました。」
「行って来ます!」
早坂と僕は戦いの準備をした。
「食料庫はB6Fの中央だ!気をつけろよ!」
医療施設を出た。
早坂の右足に粘着物がかかった。
彼の顔は苦痛に歪んだ。
スライムだ。
慌てて、呪文を唱え、スライムを炎で焼き払った。
「すまん・・・葛城・・・・油断も隙もないな・・・・・」
再び呪文を唱え始めた。
「ディ」
早坂の右足に手を当て、治癒の魔法を唱えた。
傷口が一瞬光り、彼の傷は癒えた。
「相変わらず、魔法って凄いな。」
「あってもたいして役はしないさ・・・現に悪魔に憑かれて、こんな状況を起こしたんだ。」
「・・・葛城、お前は自分の力を過小評価している・・と思う。
・・それにあの悪魔、例え葛城にとりつかなくても他のものに憑いたと思う・・・・気にするな・・・。
それより、早くこの状況何とかしないとな。」
早坂の慰めの言葉はうれしかった。
しかし、先走った行動でこの状況を引き起こした罪は永遠に自分を苦しめるだろう。
ようやく食料庫に着いた。
「じゃあ、俺が食料を捜してくるから、葛城は、ここで見張っててくれ。」
そう言うと、早坂は食料庫の中に消えた。
しばらく待っていると、奥から早坂が戻って来た。
「ええっと、基本は、不味いけどレーションで、
後は調理しなくても食べれて、良さそうな物を集めて来たぜ。
それにしても、親父の姿が無かった・・・・・・・
避難してると思うんだが・・・・・・・無事なんだろうか・・・・・
死体があった訳じゃないしな。余計な心配ばかりしても仕方ない・・・・・・
戻ろう。」
無事大きな戦闘もなく、医療施設に戻ることが出来た。
「戻ったか・・・・
桐島と橘は、病室の方にいる。
身体を休ませるのに、床の上はあんまりだからな。
早坂、扉をロックしてくれ。」
「了解。」
早坂は、医療室の入り口の扉をロックした。
これでこの中は、一応は安全だ。
「お、そろそろ、山瀬に連絡しないといかんな。」
西野は、ファームにいる山瀬と、通信で連絡を取る事にした。
アームターミナルを通信モードにし、山瀬を呼び出す・・・・・・・
「こちら西野。
・・・・・・山瀬、応答願う!」
『・・・・・・・・はい、こちら山瀬です。』
「現状を、お互いに報告しあおう。
まず、こちらの状態だが・・・・・・・・・・・・・・・」
西野はこちらの状況を山瀬に伝え、山瀬からの報告に対し、細かな指示を与えている。
「・・・・・・・・以上だ。」
『了解。指示通り対処致します。
それと・・・・・・・・』
「ん?ああ、陽子と知多も無事か・・・・・・・・よかった。
すまんな。山瀬。
しっかり頼んだぞ!」
「どうでしたか?」
「今のところ、異状はないそうだ。
ただ、点呼を取ったところ、やはりラボ以降の階の人間はほとんどいなかったらしい。
それと、早坂。
お前の御両親も、ちゃんと避難されたそうだ。安心しろ。」
「そうですか!」
「さて、我々も病室に入ろう。
食事を取って、僅かな間でも休息を取るんだ。」
病室内に入ると、由宇香が英美の治療をしていた。
「食料調達してきたぞ。」
「御苦労さま!」
「お帰りなさい!よかった、葛城くん無事に戻って来て・・・・・・」
「扉はロックしたから、一応は安全だ。
治療が済んだら、皆で食事を取ってしまおう。」
「分かりました!」
桐島が明るく答えた。
「これでよし!英美さん終わりましたよ。」
「由宇香ちゃん、貴方って腕がいいよ。
全然痛くなかったわ。」
「英美の治療は、必要以上に痛いからな!」
「あんたが痛がりなんでしょッ!」
早坂と桐島の夫婦漫才で場は明るくなった。
「ほら、騒いでないで、さっさと仕度をしろ。」
一同は、調達してきた食料で簡素な食事を摂った。
皆、努めて明るく振る舞い、場には和んだ雰囲気が流れはした。
それが偽りである事は、言わなくとも誰もが分かっていた。
ただ、皆それに気付かぬ振りをし、ひとときの安らぎを守ったのだ。