ペンタグラムに身を寄せてからもう二日も経っている。
身体の傷はもう痛むことはない。
しかし、心の傷は日が経つほどより深くえぐれていく。
寝ると由宇香が僕を責める夢を見、そして償えない自分に激しい嫌悪を抱き、そして叫ぶ。
薬を使わないとまともに眠れない夜が続いた。
どうすればこの苦しみから解放されるのか?
……分かっている。
僕がすべきことがあることを。
それは……復讐。
「…城!葛城!」
目を開けると、早坂が部屋にいた。
「葛城!早く飯食いに行かないと、朝食がなくなるぞ。」
薬の影響からか身体がだるい。
部屋を見回すと、もう他の人たちは出かけたようだ。
確か、今日は園田たちはパトロールの日だった。
僕は、傷がまだ完治していない事から今日のパトロールを免除されていた。
「ぼっとしていないで、さっさといくぞ。」
身体を引きずる様に部屋を出た。
「…大丈夫か?」
「大丈夫だと思う…」
「そうか。しかし、葛城。ペンタグラムに受け入れてもらえて、良かったよな。
あのまま、その身体で下界をさまよってたら、どうなったかわかったもんじゃない。」
「そうだな。…ところで、早坂。」
「なんだ?」
「いつになったら作戦に参加できる?」
「葛城!まだ、傷もい…」
「傷なら多少痛むぐらいで、戦えるぐらいまで治った。早くやつらを殺したい!!」
「おい、葛城、落ち着け!…俺も作戦に早く参加したいが、まだ俺らは正式に参加できるかさえ分からない。
今、英美が交渉している。もし、作戦について詳しく聞きたいなら、後で聞きに行け!」
「あら新入りのボウヤね。
苦労なしに育った感じが滲み出てるわね、かーわいい!」
どうやら僕たちの話を聞いていた女性のレジスタンスたちがからかい半分に声をかけてきた。
「こないだ入ったばかりの人ね。
元デビルバスターだそうだけど、ここじゃあ、シェルターの中みたいに通用しないわよ。」
「こんなガキでもデビルバスターって、つとまるのね。
デビルバスターも、たかが知れているわ。」
「ねぇ、この子、結構顔良くない?」
「シェルターの中じゃあ、さぞモテたんでしょうねぇ。
デビルバスターさん・・・・・・・
でもね、ここじゃあ、強い男じゃなきゃ女を抱く事は出来ないわよ・・・・・ふふふ・・・・」
「でも、彼…別の心配したほうがいいかも。
ここは、綺麗な肌をしてて顔さえよけりゃ、男でも女でも構わない奴が、結構いるからさ。」
「そうね、そういう人結構いるしね
せいぜい気をつけてね。
……フフフ…」
「でも、デビルバスターって、本当に役に立つのか疑問だわ。
足手まといにだけは、ならないで欲しいわね。
もしそうなった時は、容赦なく殺すわよ。覚えておきなさい。」
からかっている彼女らに怒りを感じた。
そんな僕の様子を見た早坂は「ここで下手に関わると俺たちの立場が悪くなる。」と慌てて、その場から僕を連れ去った。
「葛城!俺たちの立場は分かっているのか。」
早坂の言おうとする事は分かる。
シェルター育ちのデビルバスターというだけで僕たちはレジスタンスに毛嫌いされている。
ましてや、僕は悪魔を召喚出来る力を持っているため、僕に対して胡散臭い目を向けている。
「聞いているのか、葛城?」
「聞いているよ。」
「腹立つのは、俺も同じだ。しかしな…」
「それより、飯を早く食おう。」
「ああ。」