「よぉ、新入り!俺達に可愛がられてぇのか?」
「デビルバスターの制服ってのは、えらく派手だな。
しかも、そのセンスったら、完全に前時代的だぜ。
よく、そんなの着てて恥ずかしくないな。」
「まったくだ!デビルバスターだか何だかしらねぇが、てめえ達は、俺達に拾われたんだ、感謝しろよ!!」
「俺たちと同じ時間に飯を食おうとするなんて、
もしかして新人さんのご挨拶ってやつー?
エリートさんは、やる事がマメだねぇー・・・・ケッ!」
「まあ、可愛い新入りのボウヤ!
もとデビルバスターらしいけど、ここは、そんな肩書きで何とかなる様な、アナクロの世界じゃないのよ。
ま、せいぜい、泣いたりしないで済む様に、しっかり頑張んなさいね!」
「シェルターでぬくぬくと育った、おぼっちゃまの顔なんざ、見たくもないね、メシが不味くならぁ!!」
「へぇ・・・・・お前、かわいい顔してるじゃねぇか。
元デビルバスターとか言って、なかなか上玉そろってんなぁ!!
寂しかったら、俺の所に来な、ボウヤ!
可愛がってやるからよ!クククク!!」
「なあ新入りさんよぉ。
何か下手な事したら、この俺様の爆弾で木端微塵にしてやるぜぇ・・・・・・・・・
木端微塵にな・・・・・クックックック・・・・・・・・」
食堂に入ると、さっそく罵詈暴言を浴びさせられた。
「ほら、デビルバスターさんよ。不味い地上の飯をありがたく食いな。」
配給食を受け取り、混んでいる食堂の中、空いている席を探した。
喧騒とした食堂の中、レジスタンスたちはさまざまな話をしている。
「人間は、今まで悪魔にやられっぱなしだった。
だが、これからは違う。
少数では太刀打ちできない事に気付いた人間は、こうしてひとつの組織を作り、対抗できる様に成長したんだ。
時間さえかければ必ず、悪魔共をこの地上から、一掃する事が出来るんだ!」
「ペンタグラムは無敵よ!
勿論、作戦の度に死傷者は出るけど、必ず勝利してきたわ。
悪魔は必ず、この地上から消し去ってやるわ!」
と熱く隣の人に語っている人もいるし、
「新宿都庁は悪魔共の拠点だが、それだけでなく、あそこには、近頃バエル御本人がいるらしいんだ。
都庁を落とすなら、今がチャンスさ!
頭領であるバエルを倒しちまえば、さすがに悪魔共も、統率が取れなくなるだろうからな。」
「あそこを落とすのは、並大抵の事じゃないだろうよ。
死人の何人かは、覚悟せざるおえないな・・・・・・。」
と気になる噂を話している人もいる。
ようやく空いている席を二つ見つけた。
その席に座り、飯を食べた。
今日の朝食は乾いた不味いパンと具も入っていないスープだった。
スープをすすりながら、早坂と今後のことを話していた。
向かいのテーブルに座っている人たちがこちらをニヤニヤしながら話している。
「・・・・・・労働キャンプ解放作戦の話、聞いたか?
えらい危険な役目があるらしいぜ。」
「まぁ、そーゆーのは下っ端がやるんだろうよ。
俺達ゃ関係ねぇだろうな。
なぁ?新入りさんよ。」
「もっとも、シェルターでぬくぬくと育った奴に、そんな根性なんてあるのかね?」
「ハッハッハッ……そりゃそうだ。
根性があったら、シェルターから逃げないよな。」
「まぁ、せいぜい頑張りな。新入りさん!」
言いたいこと言って、彼らは席を立った。
それとすれ違うように渡邊さんと他数名がその席に座った。
「葛城君、ここの居心地はどうだ?」
「…いい……と思います。」
住み心地は悪いと正直に言えるわけがない。
しかし、渡邊さんはそれを察知して言葉を続けた。
「まあ、破壊前の下水処理場跡を利用しただけの、決して良いとは言えない環境だが、住み慣れれば案外悪い物ではないぞ。
まぁ、いろいろ言われている様だが、ペンタグラムの人間は、レベルが低いと思うかい?」
「思います!」
つい、本音を即答してしまった。
「おい、何言っている、葛城!」
早坂は慌てていたが、
「ハッハッハッハッ………」
渡邊さんたちは大笑いしていた。
「ハッハッハッ!正直者だな!
英才教育の行き届いた、シェルター出身の君からすれば、彼らの様な人間は、レベルが低く感じるだろう。
しかも、彼らは君達がデビルバスターであるという事が、癪に障って仕方がない様で、やたらと君達に対して難癖をつけるしな。
しかし君達とは違い、地上に取り残された彼らは、同じ人間だというのに、君には想像もつかない程、悲惨な生活を強いられて来たんだ。
彼らには、彼らの価値観がある・・・・・・・・
色々と不愉快な思いはするだろうが・・・・・・・
君達の事をデビルバスターではなく、自分達と同じ人間だと認識すれば、彼らの無礼も変わるはずだ。
それまでは、辛抱してやってくれ。」
渡邊さんの一言一言が説得力を持っていて、安心できる口調だった。
「はい。」
僕はすぐに答えた。
「頼りにしているぞ。」
それから僕達は渡辺さん達と悪魔について色々と話した。
どれくらい時間が経ったのだろうか?
食堂の入り口から男が駆け足で近づき渡邊さんに耳打ちした。
そして、
「話の途中ですまないが、所用ができたので先に食事を終わらせてもらうよ。」
そして、渡邊さんは去っていった。
彼が去った後、先ほどの談笑が嘘だったかのように消えた。
「リーダーの言う事はもっともなんだよ。
デビルバスターって奴は、俺達とは違って、悪魔に対する知識がある。
だけど、どうしても抵抗を感じるんだ。
だって、勝手な話じゃないか、シェルターが健在の頃には、外の世界がどうなってようと、見向きもしなかったんだぜ。
急に仲間だって言われても、簡単に納得できないよ・・・・・」
僕より少し若い少年が独り言のように話した。
それに呼応するように
「そうよ。シェルターの手を借りなくても新宿を中心にして各地に、ペンタグラムの勢力は広がってるのよ。
ここは、ペンタグラムの前線基地ってだけで、ここにいる人間が全てじゃないわ。
元デビルバスターなんていなくても十分な人員はいるわ。」
と女性のレジスタンスが声を張り上げた。
「馬鹿野郎、落ち着け!」
戦い慣れたレジスタンスの一人が怒鳴った。
「気悪くしたらすまん。
ここの連中は、なまじ悪魔と接して来てるもんだから、雑魚悪魔共を見て、悪魔ってのはそういうモンだって、軽く見ちまってるんだ。
そこんとこリーダーが幾ら教え込んでも、実際目の前に高レベルの悪魔が現われなきゃ、奴ら、ピンと来ないんだよ。
・・・・ったく実戦経験があったって知識がなきゃあ、馬鹿みたいに犬死にするだけってのによ!」
「それぐらい分かっているわよ。」
「この調子じゃあ、労働キャンプはまだしも、都庁を落とすのは厄介だな。
何てったって都庁にはバエルがいるんだ。
守りの堅さは尋常じゃないだろうよ。
・・・・ぞっとするね。
俺はリーダーと同じように期待しているよ。」
「ありがとうございます。」
僕がお礼言う前に、早坂の明瞭な声が食堂中に広がった。
「いいって。それより成果を見せてくれればいい。まあ、がんばりな。」